叙情派官僚妊婦系

 『BSマンガ夜話』見逃しちまったよ。『事件屋稼業』だもんなー。録画しようとさえ思っていたんだけど。森薫『エマ』4巻の後書きに「自由の追跡者」「寂しき狩人」ってあるでしょ。この元ネタになったマンガじゃないの、『事件屋稼業』って。

 狩撫麻礼×かわぐちかいじ『ハード&ルーズ』の土岐正造や『事件屋稼業』の深町丈太郎が暴れまわった80年代は、決してスカではなかったと思う。彼らの苛立ちは正当であり、また余りにも切実である。私はあの「毒づき」に深い共鳴をおぼえてしまう。だが80年代を通過していない者にとって、あの「毒」は否定ではなく、肯定として響く。自分があの探偵たちのような輝きを持つことは、この先一瞬もないだろう。彼らの口真似をすることも、私には不可能である。

 おそらく、かわぐちかいじ谷口ジロー大友克洋以降の作家である。「ニューウェーブ」というものは団塊の世代の劇画作家たちを飲み込むものとして存在したのではないか。いうまでもなく、かわぐちかいじは『沈黙の艦隊』を描いたし、谷口ジローも『坊ちゃんの時代』を描いた。

 劇画は「リアル」であった。大友克洋も「リアル」であった。では、かわぐちと谷口と大友と並べて、どれが一番「リアル」であろうか。

 浦沢直樹?お客さん、勘弁してくださいよ。