右を向け
- 作者: 山名沢湖
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/11/11
- メディア: コミック
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マンガ表現論的視点で読んでいくと、主人公は右方向ばかりを向いていやがる。マンガは通常右から左へ読んでいくものなので、進行方向むき(右向き)の顔は何かを「受け流す」ような印象をうける。
p.161の三コマ目に注目しよう。ここでも主人公の顔は右を向いている。主人公はクラスの中で浮いている。そして主人公の秘密が発覚するシーンで、主人公がそれでもなお、対立を意味する左向きの顔ではなく、右向きの顔をしているのは、この作品の「受け流し」感を強めている。同ページ4コマ目ではクラスメイトと主人公が対峙しているのだが、視点を引き、両者を一つのコマにおさめるような描き方には、ある種の軽さがある。そしてここでも主人公は右を向いている。クラスメイトとそれから浮いている主人公の間に強い対立劇は生まれない。
コミックハイもそうだが、山名沢湖の作品も男性向け少女マンガだといっていい。よしながふみによると「少女マンガはマイノリティのもの」だそうだ。腐ってもマジョリティであり、かといって「少女マンガ」を読めてしまう程度にはマイノリティである人々は、どのように「少女マンガ」に接したら良いのだろう?そうこう迷っていても「男性向け少女マンガ」を読むというスタンスは、誤解や曲解を撒き散らしながら、一つのマンガ史を回してきた。
『つぶらら』は右を向いている。でも、それを読めてしまう俺らは右を向いているわけじゃあるめえ。だから『つぶらら』の右が気になるのか?