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百合星人ナオコサン (1) (Dengeki Comics EX)

百合星人ナオコサン (1) (Dengeki Comics EX)

百合のことはわからんが『百合星人ナオコサン』が面白かった。今年読んだ漫画の中で一番かも知れない。

作中の元ネタを羅列し組み上げていくと、見事な大聖堂が出来上がるわけでは決してなく、夏草に包まれた荒涼たる廃墟が浮かび上がるような作品。作者は無毛な幼女じゃなかった、不毛な場所で黙々とガラクタどもを陳列している。

長谷邦夫のパロディ系というものがあると思う。マンガ業界の公的な記憶を根拠にして、その上でギャグをやっている。

吉崎観音のパロディ系というものもあると思う。「マンガ業界の公的な記憶」から外れた記憶群を相手にしているやつだ。そこでは「劇画」というよりは『北斗の拳』が採用され、手塚治虫というよりは藤子不二雄が、『ガロ』というよりは『ジャンプ』が、ガンダムというよりはガンプラが採用される。

長谷邦夫のパロディ系」と「吉崎観音のパロディ系」はいつか対決することになるだろう。マンガ表現論もゴーマニズム宣言も少年ジャンプも萌えも「ニューウェーヴからこっち」の問題だからだ。

そんな対決とは無縁の場所に『百合星人ナオコサン』の廃墟は広がっている。

付属CDの歌詞を引用しよう

有り余るとねじれたものが増えるね
人もエロもお金も 一掃しちゃってお願い

記憶も有り余るとねじれたものが増える。んなもん全て捨て去ってやりたい。そんな大傑作。