ちょいとマンガのことなどを

最近マンガのことがわからなくなってきた。わからないというか、つまらない。そしてそれはマンガのせいではなく、おそらく自分のせいである。傲慢な言い方だが、高校時代の自分が好きだった「絵」や「物語」が、現在の若手の作家たちによって実現され、紙面で踊っている。おそらく自分はこの事態を肯定すべきだ。でも、何かが違う。夢みていた世界と、その夢が実現された現実の間には隔たりがある。年齢というものも関係しているのかも知れない。嫉妬しているだけかも知れない。そんな夢なぞ見ていなかったかも知れない。でも、やはり違うのだ。今では忘れかけている「オタクバッシング」の裏には、「夢みていた世界と、その夢が実現された現実の間には隔たりがある」みたいな感覚があったのではないか。では、どうするか。多分、高校時代の自分をぶっ殺すしかない。殺すためにマンガを読むことにする。


かみさまお願い (祥伝社コミック文庫―南Q太傑作選)

かみさまお願い (祥伝社コミック文庫―南Q太傑作選)

傑作選を読んでいる時点で負けである。「面白いが、隔世の感がある」と評すればいいのだろうが、そうも思えない。かといって現代的とかいうわけでもない。
表題作の『かみさまお願い』を一番面白く読んだ。兄にセクハラを受け続けた主人公が、川の底に沈んだ「はにわ」にお願いして、兄を呪い殺すという話である。ドロドロとした話のようにしか聞こえないが、主人公は不幸中の不幸から一歩手前にいるし、兄も鬼畜中の鬼畜から一歩手前にいる。そのむかしヤマタノオロチの血が流れたといういいつたえがある「赤川」から取り出された「はにわ」が世界を広げていかないところが、この話の一番良いところである。南Q太は「兄妹の近親相姦という神話的世界を神話それ自体が否定している」という要約に、その一歩手前に踏みとどまることによって、後ろ蹴りを食らわせている。すばらしい。では、その蹴り足に泥は付いていないか、といえば怪しい。南Q太は面白く、マンガは難しい。



ドロテア~魔女の鉄鎚~ (1) (カドカワコミックスドラゴンJr)

ドロテア~魔女の鉄鎚~ (1) (カドカワコミックスドラゴンJr)

絵柄によってリアリティは決定される。いや、決定させて読んでしまう。冬目景羊のうた』は何時ヴァンパイア伝奇ものに転化するのかと、いつもハラハラして読んでいた記憶がある。安彦良和のマンガの良さもこの危なっかしさと無縁とはいえないだろう。『王道の狗』にガンダムが出てきそうで怖いと考える人もいるし(俺だ)。『ガンダム』に石原莞爾やらトロツキーが出てくるのではいないかと妄想する人もいる(結局は俺だ)。
本作はその「危なっかしい」ものの一つに挙げても良いだろう。エロマンガ出身の作者に「萌え」を期待するなら、その真面目っぷりに肩透かしを食らう。その逆の立場に身をおいても、それと同じような感想を持つ。どこにたどり着くか全くわからないが、作者は多くの火薬を船に積み込んでいるのではないか。要注目ってことで。


ダレたことばかり書いているような気がしてきた。今朝読んだアカヒ新聞(6月3日付けの3面下)に『子育てハッピーアドバイス②』という本の広告が載っていた。その広告に使われていた四コママンガがある意味面白かったのでupする。

ぎゃー。ちよちゃんがアカヒに進出ですよ。まあパクリではある。よくいってオマージュである。とはいえ、萌え四コマの波が左翼の牙城まで届いたかーッ!あずまきよひこ(のコピー)は育児を救う?ゆくゆくは崩壊しかけの保守的意味の「家庭」まで救ってしまうのか?「萌え」を左右両陣営は利用しようと考えているわけだが、逆に乗っ取られるんじゃないか。コピーでさえもコレだもの。本物がやってきたら怖いよ。いや、なんというかオタクに本物もコピーもないかも知れんが。もちろん自分には「だが、それがいい」といえるような気迫はありません。