『だめよめにっき』感想と雑感

なんか女の子が空から降ってくるんですよ。んで君は倒れている女の子を介抱する。元気になった女の子に街の男たちが殺到する。女の子はまんざらでもない様子。君は大いに嫉妬する。「僕が女の子を救ったんだぞ」と吠え、女の子に「君は僕に感謝すべきだ」とか口走ってしまう。女の子は答える。「あなたには感謝している。でも、あなたに私が誰と付き合うか指図される筋合いは無い。」と言われる。そして「あなた、私が空から降ってきた時に、ずーっと私のパンツ見てたでしょう。気持ち悪いよ」と止めを刺される。君は鈍器を持ち、女の子に殴りかかる。その時街の男が乱入して、君は切り倒される。そこから物語は始まる。じゃーん。勘違い男の意味不明な復讐と、男たちの間で姫呼ばわりされる女の対決!サウンドホラ○ンプレゼンツ!続かない。


だめよめにっき (アクションコミックス)

だめよめにっき (アクションコミックス)

このマンガを読みながら上のようなことを考えた。嗚呼、恋愛を描くのはツライのだ、と。恋愛をリアルに男女を痛く情けなく駆け引きがすれ違う様を描けば、名作はできあがるだろう。だが、こんなものは読むのに大変な労力がいる。作品を開けるごとに、身構え、傷つかねばならない。ならば、それよりレベルを落として、主人公がモテつづけるようなマンガを描けばよい。主人公は求愛され続け、それで葛藤するような。無論、こんなフィクションフィクションしたフィクションなんて読むに足らない。んで、モテる主人公に君は「けまらわしい」とか言うかも知れない。

ここで他の方法が見出される。男と男の恋愛を描けば、女と女の恋愛を描けば、異性愛者である君は傷つかない。この場所において、人の痛さやら空回りっぷりを、低リスク低コストで読むことができる。たぶん。たぶん。そして、彼らが恋愛をするのではなく、単に愛し合うこと。単に日常でやりとりすること。を描けば、この手の手法は、ある種の境地にまで達する。たぶん。(あずまんが大王が恋愛をきれいに「消毒」していることを思い浮かべてもよい)

二人の出来上がったカップルを、結婚までしてしまった二人の日常を、二人の通い合いを描いた本作は、その境地みたいなものに達しているかも知れない。色々あった後の、愛のある「共同性」みたいなものとでも言おうか。

本作を批判することもできる。「んなもん、無い」と言う事もできる。ただ、幾度もページを開いて、その共同性みたいなものを幾度も味わいたいという衝動に駆られる。ならば、作品としては大成功じゃないか。これを読んで君がどうするかは別だろうけど。じゃーん。そして理不尽な復讐劇が始まる。男は傷の手当をし、街に駆け出した。続かない。