この星の無数の塵のひとつだと今の僕には理解できない(笑いをこらえながら。アキハバラ解放デモ雑感2)

行動とは、たとえいかように些細な行動であろうとも、およそ事前には予想もしなかった一線を跳び越えることに外ならない。事前にすましておいた反省や思索は、いったん行動に踏み切ったときには役に立たなくなる。というより、人は反省したり思索したりする暇もないほど、あっという間に行動に見舞われるものだ。そしてそこには今までの反省や思索を無効にする新しい経験を持っている。

西尾幹二ニーチェ


保田「YES!憲法 NO!タッチ。保田です。」

やすひろ「いいなり!あいぶねーしょん。やすひろです。」

保田「で、続きだけど。ここ

オタクってのは政治に対して趣味を掲げたやつらだ。そのような萌えの世界で、政治萌えを掲げるのは正道だし、逆に萌えを根拠として政治をやることは内ゲバだが、頼もしいかぎりだ。ただしオタク的枠内においてだが。

って書いたけど、半分当たったね。このデモの余波をみると、オタク界の内ゲバじみてきた。君はデモをした人間に、政治的というよりはオタク的な可能性を見たわけだ。」

やすひろ「可能性というよりは同情かも知れない。オタクは常に政治に勝利してきた。連合赤軍事件の同年には『デビルマン』が、その2年後には『宇宙戦艦ヤマト』が現れた。ポスト冷戦の可能性が自民―社会連立政権という奇妙な形で閉じた頃には、『エヴァンゲリオン』が出没した。もし、オタク内で大胆な意趣変えをしようと思ったら、オタクが排除してきた政治に接近するのは面白い趣向であると思う。」

保田「共産趣味ってこと?たしかコレ、大月隆寛先生も言及してたよね。しかも『つくる会』追い出されたあとの本で」

やすひろ「共産趣味ってのは少し違うと思う。感想として聞いて欲しいんだけど、共産趣味はあくまで趣味だと思うんだ。『政治』が無惨に負けてしまったからこそ、その敗者を愛でることができる。我らが大命題『のりつつしらけ、しらけつつのる。』ってことからすると、この趣味は軟弱だ。趣味を乗り越え、ギャグなのかマジなのかわからない領域にまで高めることが、趣味サークル内で勝ち残るためには必要だと思う。だから本気にならなければいけない。」

保田「だったらデモ万歳ってこと?熱血になれない小市民を描くことから、僕らにも可能な熱血を描きはじめた島本和彦先生のような?」

やすひろ「島本先生は別にして、そんなに簡単な話ではない。『のりつつしらける、しらけつつのる』これを頭にいれながらも、ものの見事に崖から落ちたヤツがいる。連合赤軍、『宮崎勤』、オウム真理教。もしこいつらがいなかったらどれだけ日本が住みやすくくなっていただろうと思ってしまう。70年代安保ってのは、革命というよりは、その祝祭性が指摘されているように聞く。たとえば『万延元年のフットボール』とかさ。かわぐちかいじ『はっぽうやぶれ』の主人公は学生の騒乱を『山笠みたいだ』と評するわけだし。山上たつひこ『光る風』の主人公も、「学生運動なんて所詮祭りじゃん」と議論吹っかけられる訳だし。デモといった行動は当時からして、祝祭でしかなった。そして祝祭を盛り上げるためには、それが革命に近付かなければならない。祝祭が、理念なき革命と見分けがつかなくなった頃に、そこに残されたのは、恐ろしく情けない暴力だ。年期の入ったオタクたちはこの彼らの失敗を見てきた。いや、失敗を我がもののように生きた。ならば彼らの英知に耳を傾けなければならない。のりつつ、しらけることに失敗した彼らと共に生きたオタクを」

保田「うーん。つまり、主催者は中核派云々という議論は、彼らの培った「キ印」感知センサーが働いたってこと?」

やすひろ「そうかも知れない。だから反論するには、自分たちは新左翼系が毛嫌いしている団体とも付き合ってますよ、だから中核派と無関係ですよ。というよりは、自分たちが基地外でないことをアピールするほうが肝心。だからこの文章は成功していると思う。でも秋葉原でデモをすること自体が基地外だし、それに自分が○○でないことを証明するのは難しい。よって中核派と無関係であることを示すのは難しい。中核派と無関係で、ブログを荒らしておらず、mixiで粛正に手を貸していない限りにおいて、彼らは可哀想だ。」

保田「つまり、ここの人が元自衛官であることよりも、中核派であることを強調されているのは、オタクが右傾化しているってことだね。デモについていったら山荘よりかは、ひぐらしの声が響いてきたりして。かなかなかなかな。いちげきで叩き割ってあげるよぉおおお。『ひぐらし』の酷えオチみたいな陰謀が渦巻いていたりして」

やすひろ「失礼なことをいうな。なんでも右傾化と結びつけるな。おまえは香山リカか。そして人の話を聞け!」

保田「話をかえるけど、オタク自体が政治に接近してるってのもあるんじゃない?たとえば米澤嘉博(ところでこのデモは彼がいない世界での出来事だ。氏ならばこのデモをどのように語っただろう?)は

3年目を迎えた中曽根内閣は何処となくうさんくさく、円高の中ゆるやかなデフレも進行しています。―しかし、コミケットは元気です。こんなに目一杯元気でいいんだろうか、と準備会があきれるぐらいです。その元気さは、時に大人達に眉をひそめさせますし、また一部の大人達はそれを消費社会の枠組みの中に納めようと考えます。が、そんな思惑ととは全く無関係にコミケットの一日は取り行われます。

C29コミケットカタログの代表あいさつ

ってノンポリの見本みたいなこと書いていたんだけど、その13年後には

唐突ですが、選挙には行きましたか?いったい何をと思うかも知れませんが、個人的な趣味の世界である同人誌業界も、社会や政治と全く無縁ではありません。不況・円高・失業率の低下(ママ)などはジワジワと同人誌にも影響を与えていますし、現在国会で審議中の「児童買春・児童ポルノ法」なども成りゆきによっては同人誌の表現に大きな変化をもたらすことになるでしょう。選挙や政治にマニアや”オタク”が無縁であると見られることは、逆に無視してすべてが高所で決定されて行くことにもつながります。

C54コミケットカタログの代表あいさつ

って書くわけじゃん。やっぱりオタク界隈の言説は趣味から政治の方向へ変化しているんじゃない?逆向きだけど小林よしのりとか。」

やすひろ「それは少し違う思う。それは児ポ法関連の表現規制に対して、自分たちの利益を守ろうとする健全で明確な部分からきてるんじゃないの?利益(受益)集団が政治によって脅かされているから、政治参加しよう。せめて規制をかけかねない政治から逃げていずに、興味をもとう。利益(受益)のためにってことじゃないの?ところで、この手の運動に深くコミットしている鎌やん先生のエロマンガはすごいよ。テーマは政治とオタクなんだけど、あのデモのような感じは全くしない。癒やしとか快感とか萌えというよりは、むしろ不快で考える契機を与えてくれる。デモに行った人とか、十代の人は一度読んでおくといいと思うよ。鬱になるけど。ブログ閉じたくなるけど。面白いのはこのデモを「DQN化」と評した#104さんと口調が似ているんだよな。両者とも炉利と動物が好きなとこも似ている。やっぱりオタクバッシングで鍛えられた世代は偉いよ。うん。」

保田「グダグダになってきたから、ここらへんでデモらしく総括しよう。」

やすひろ「総論賛成。各論反対。同世代人の血が騒いで面白そうだからデモは賛成だけど、細部に踏み込んでみると反対。」

保田「んで、オタクだから細部が大切。だからデモには反対と」

やすひろ「そういうこと。なんというか今回の件は面白かった。自分のよく見に行くブログの人がdisりあってんの。なんか世間はせまいなあ」

保田「それはたこつぼの中であんたがあがいているだけじゃないの?アキハバラでデモしてこい。そうすりゃ世間がみえてくる。冒険でしょでしょ?

やすひろ「ひでえオチだ。エヴァンゲリヲンの動画が公開されたね。青春ごっこはもうこりごりなのに。でも感じちゃう(ビクビク)」