吠える

杉浦日向子先生の冥福を祈りたいんだけど、祈る気にもなれない。もっとマンガを描いて欲しかった。

ナショナリストが目指すべきは、幕末の革命家たちではない。革命が終わったあとの町人達のユートピアを私達は夢見てきた。わけのわからない唄を歌い、旗をふり、北の砂漠や南の密林に死体を転がしたのは、その「町人の世界」であり「終わらない270年間の平和」を実現するためであった。

「江戸」や「町人」は単なるバブル期の妄想であったかも知れない。鬱屈した人間のみる「別の世界」であったかもしれない。しかし杉浦日向子のマンガが傑作である以上、それを笑うことはできない。

未完のナショナリズムと流産したアナーキズムを描いてしまった山口貴由は、『シグルイ』で復活を果した。このような時期に杉浦の死と作品は、如何に響いていくものだろうか。