提督。辻政信参謀が鎮守府に着任しました。


「提督。辻政信参謀が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執ります。」
「執るのか……。」
「指揮は執れるんでしょうかね。参謀ですし。だって陸軍でしょ。」
「いや、でも、あの人のことだからなあ。ちょっと司令部に問い合わせてみる。DMMさん。ちょっと聞きたいことが。え?回線のことじゃなくて辻参謀がですね」

「ここか?提督殿の部屋は。なんだ貴様は?艦娘?姑娘だろ貴様は。入るぞ。提督殿、ただいま辻着任致しました。早速ですが作戦の立案があります。」
「辻参謀。ちょっと落ち着かれては?」
「落ち着いている場合ですか提督殿。こうしている間にもガ島ではわが軍が。それになんだ!この娘は!」
「ひ、秘書艦です。」
「提督殿。神聖なる鎮守府で女を囲っておられるとは!不謹慎極まりないですぞ。」
「いや、これは艦娘といって海軍の兵器でして」
「海軍はそのような名目で女を囲っているのか!民の血税を何と思っているのか!東北の農民がどんな現状かわかっているのでしょうな!」
「いや、だから参謀。この娘たちは兵器です。ちょっと電。12.7mmを撃ってくれ」
「ですが提督」
「この人には、何を言っても無駄だ」
バンバン
「おお。まことにこれはすごい兵器ですな。是非とも中国戦線に欲しい。」
「(やめてくれ)」
「しかし提督。今回の作戦はビルマ戦線の話です。」

「ですから、ちょっと落ち着かれては?(時間を稼ごう)。そういえば陸軍からお借りしている、まるゆとあきつ丸を呼びましょうか。おーい」
「提督。あの二人は休暇届けを出しています。」
「逃げたな。」

「で、提督殿。作戦ですがよろしいですかな。」
「ちょっと待ってください。なんで陸軍の人が作戦の指揮を取れるのですか?おかしいじゃないですか」
「だまれ小娘!」
「ひっ」
「貴様。皇軍を何だと思っているのか!おまえら艦娘を含めて、軍隊を統帥するのは天皇陛下であるぞ。陸軍も海軍もあるか!陛下の軍隊に意見するとは小娘、わかっているだろうな!」
「て、てーとく」
「提督殿。なんだこの小娘たちは。艦娘たちは皆、こうなのか。海軍の教育はどうなっているのか」

「話を聞きましょう(仕方ない。電が本土にしょっぴかれては困る)」
「コングラチュレーション!テートク!」
「(ああめんどくさい奴がいいタイミングで入ってきた)」
「なんだ!このバカたれは!」
コンゴウデース。ダレデスカ?フーアーユー?」
「おまえこそ誰だ!英語だと?貴様、皇軍はいまアジアから英米を放逐している最中であるというのに!提督どの、この娘を辻は許しておけません」
「ツジサン?サンボウ?リクグン?ここはカイグンネー」
「貴様もセクト主義か!」
「イマ、ツジサンもエイゴつかったネー」
「はあ?なんだ貴様!その口調はシナ人だな。馬賊だな。満州では世話になったな。ここで射殺してくれる!」

「わかったからやめてください辻参謀」
「わかってくれましたか提督。作戦には陸海の共同が必要なのです。いますぐに作戦を」
「で、なんですか」
ラオスです提督!ラオスはわが皇軍によって欧米から解放されました。ラオス王国に働きかけてビルマに攻撃をしかけます。そのための工作に私をラオスまで送り届けて頂きたい。」
「はあ」
「八紘一宇ですよ!ラオスの協力によって援蒋ルートを断つ!ラオスは日本軍に恩を感じております!彼らも大東亜の共栄のために喜んで協力するでしょう。ですから早く軍艦でも艦娘でも貸して頂きたい。」
「それってうちにとって何の得が」
「(やめとけ電)」
「小娘。まだ言っているのか。八紘一宇だ!」
「ハッコーイチウ?」
「御心で天下を一つの家のようにする、という意味だ。貴様らは尋常小学校も出ておらんのか!」
「ダッタラ、テイトクとも家族になれるネ。」
「そうだ。お前のような馬賊でも艦娘でも皇民と夫婦になれる。日本人、漢人朝鮮人満洲人、蒙古人、そして艦娘!六族協和だ!」
「マリッジ!マリッジね!テートクとマリッジ!ワタシラオスまでイクね」


かくして金剛によって辻政信参謀は輸送された。その後、彼はラオスで消息を絶った。


帰ってから金剛は「ハッコーイチウハッコーイチウ」と煩かった。
だが、終戦とともに「キュージョーキュージョー」と言い始めた。

辻や艦娘の見た夢とは何だったのだろうか。
ただ私にわかっているのは彼らの夢を土台にして現在の平和が建っているということだ。
私は注射器を引いた。
電にヒロポンを打った。
私と艦娘の長い平和は始まった。