わいの考えた押井版ガルパン劇場版プロット。押井は俺に金を渡すべき

http://d.hatena.ne.jp/huyukiitoichi/20130506/1367830589(参考)

このプロットで押井風2次小説を書こうと思ったがやめた。


1、朝霧のなかの国道51号線。縦列行進する8両の4号戦車。県立大洗女子学園戦車道チームのものだ。隊列の先頭にはアンコウのマークが入った戦車。キューポラから半身を乗り出している少女のシルエット。


2、戦車は榴弾で正門を破壊すると、戦車は施設内に散開していく。通信手が命令を伝播させていく。「施設内の通信や電力等のインフラを破壊せよ」と。呆然と、その破壊劇を見ている守衛。その顔は戦車に自分の家屋を破壊されてよろこんでいる地元住民とは真逆のものであった。


3、ニュースが流れる。全国大会を制した大洗女子の戦車道チームが大洗市の原子力関連施設を占拠した、と。彼女たちの狙いは何なのか。反原子力運動なのか、はたまた体罰反対のデモなのか、それとも・・・と憶測を述べる社会学者やニュースコメンテーターたち。戦車に乗った少女たちは何の声明も出していない。


4、総理はこの異常事態に警察官僚を呼び出し、緊急的な対応策を出すように命じる。官僚たちは応じる「警察の諸装備では、戦車には対応できません」と。総理は頭を抱える。自衛隊に出動してもらえば、事態は収拾できるだろう。しかしそれは現行法が許さない。そして何より自衛隊内部には戦車道のシンパが多すぎる。苦悩する総理に戦車道を管轄する文科省大臣が進言する。「戦車道によるクーデタには、戦車道によって対応しましょう」


5、文科省の使いが、西住流戦車道の家元邸宅を訪れる。西住しほは、狂乱していた。
「戦車道は遊戯だった」と師範は言う。
戦車道とは創られた伝統に過ぎない。
そもそも戦車道とはGHQの日本国州兵構想によるものであった。
来るべきソ連の襲撃にむけて、民間レベルでの防衛力を高めるために、旧式の戦車を学校区ごとに装備させる。
この構想に、自衛隊から排除された旧軍関係者とその機甲派たちは大いに便乗してきた。
また女子部を創立することは、憲法の「男女の平等」にも合致する。女性団体たちはこの構想に次々と賛同していく。
勿論、多くの者が、このような禍々しい団体に反対はした。
しかし彼らを押し込めるための文言が次々と作られていく。
曰く「戦車道は戦争ではない」
曰く「戦車道は武道であり、競技である」
かくして戦車道は輝かしい伝統として、偽史を紡いでいく。
「西住流には、なにもないのよ」
西住しほは、利休好みのイミテーションの壷を、インクジェットプリンタで描かれた掛け軸にぶつける。
まったくそのとおりだ。西住流とは、せいぜい50数年の歴史しかない。それも、インチキの伝統を飾るだけのハッタリだけの武道。その内実はなにもない。ペテン師や講談師が記述した、西住流の「真髄」たち。何も知らない大衆たちは、これをもって西住流の秘伝とするだろう。しかし、実際にその教祖である西住しほには、そのカラクリがわかっていた。

「でも、あの娘は違う。」
姉は凡才だった。凡才ゆえに、そのフェイクさを押し隠すために、胸をはって演技を続けた。しかし妹は違う。まほは・・・
「あの娘は時代が違っていたら、どれだけの人間を殺したのだろう!」
フェイクでしかありえない本家に、うまれてしまった天才。偽者の世界で、孤独な咆哮を上げ、血を求めて彷徨う魔獣。それが母による西住まほのへの評価だった。だから彼女を西住流から追い出した。

畳をかきむしる母を、あわれみとともに見下ろす姉。
「まほは、私が止める」
クーデタを起こし、戦争ではない戦車道を用いて、本当の戦争を始める妹。
それを止めるのは、フェイクでしかありえない西住流を受け継ぐ姉だった。



6、戦車道によるクーデタを止められるのは、戦車道だけであった。警察の装備では戦車に太刀打ちできない。自衛隊は出動できない。しかし戦車道と戦車道を戦わせれば、それはスポーツである。クーデタとその鎮圧戦は、全国大会準優勝チームによる、単なるリベンジ・マッチになる。戦車道を使い、ホンモノの戦争を起こそうとする妹。ホンモノの彼女を制止できるのは、ニセモノである姉だけであった。


7、黒峰森のチームが施設を取り囲む。学園が持つ全車両がここに集まった。逸見エリカは西住まほに進言する。
「隊長はここに残っていてください」と。プラウダ学園の戦車道チームからの情報によると、プラウダ高校内のサヨク趣味の高じたものがRPGを奴らに渡した可能性があると。狭い施設内で、RPGは二次大戦期の戦車を容易に屠ってしまうだろう。RPGは戦車道では使用されない。ゆえに、戦車内の安全装置は、RPGへの対応がされていない。ロケットの爆炎は、少女の体を鋼鉄の殻のなかで蒸し焼きにするだろう。これは戦車道ではなく、戦争なのだ。奴らは本気で殺しにやってくる。
「大丈夫だ」
まほは震えた。怖かった。しかし、フェイクでしかありえない彼女は、気丈さを演じた。冷静を振舞った。それが彼女の戦車道だった。


8、死闘。使い勝手の良い4号戦車は奮戦する。しかし物量に押されて、多くの少女たちは白旗を上げてく。カメ、アヒル、カバ、うさぎ、カモ、レオポン。残る車両が、妹の乗る戦車だった。


9、姉は妹を仕留めた。白旗が上がる。TVの向こうでは、多くの喝采が起きているのだろう。戦車道の練習試合。特別戦。アンコウチームはハッチを空けて出てこない。姉は4号戦車に飛び乗ると、扉を開けた。


10、アンコウの描かれた戦車には妹はいなかった。秋山という少女が、まほに語りかける。
「西住殿はもういません」
勝戦で姉が放った榴弾の破片が、頭を出している妹に当たり、その時にもうみほは致命傷を負っていたのだ。ホンモノの戦争を起こそうとした妹は虚像に過ぎなかった。彼女の幽霊に惹かれた少女たちが、戦争を起こしてしまったのだ。 西住流は勝った、と姉は少しの間思った。

その姉に秋山が手を伸ばす。車内に彼女を引き込もうとしている。


11、フェイクとしての革命を、フェイクである戦車道が止めた。しかし、これによって「ホンモノ」の平和が訪れたとしたら、この戦いは「ホンモノ」だった。西住流はこれによって「ホンモノ」となった。戦車道は今度、「ホンモノ」の世界の治安維持に使われるだろう。「ニセモノ」の西住まほは、「ホンモノ」となった。まほは、みほとなった。だったら、やるべきことがある。
「行きましょう、西住殿」
秋山に手を引かれて、少女は戦車へ搭乗した。